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英でブームに  ネットで召集された大勢の人々が突然、公共の場に出現し、大筋だけが決まっている台本に従って行動した後、登場時と同じように忽然と消え去ってしまう『フラッシュ・モブ』。イギリスで最近、これにセックスを持ち込み、露出癖と群集、そしてインターネットをミックスした『ドッギング』と呼ばれる新しい行動がブームになっている。  ドッギングは、テクノロジー、フリーセックス、ナンパ、のぞき見趣味を組み合わせたものといえる。つまり、大小の群集が、ネットで知り合った露出癖のあるカップルが自動車の中でセックスするのを見て、ときには一緒に加わるといった具合だ。  人気の高いドッギング関連サイト『メラニーズUKスウィンガーズ』の「ドッギングに関してよくある質問」ページには、次のように解説されている。「『ドッギング』は、野外において進行中のすべての性的行為を指す包括的な用語。自分の車で行為を他人に見せることから、屋外のピクニック・テーブル上での乱交に至るまで、あらゆることが含まれる」  ドッギングは、どうやら広範囲にわたって普及しており、年齢、所得水準、経歴にかかわらず、さまざまなカップルや独身男女を引きつけているようだ。しかし当然ながら、ドッギングには、女性よりも男性のほうが集まる傾向がある(写真)。  ドッギングが最もひんぱんに行なわれているのは、郊外の公園、散歩道、スーパーの駐車場などに停車した車の中だ(写真)。ドッギング(dogging)という語のいわれには、さまざまな説があるが、おそらく「犬を散歩させる」と言い訳して夕刻に外出することに由来していると思われる。  ドッギングは通常、ドッギングのための多数のサイトや掲示板を通して組織される。こうした情報サイトは、ここ2年ほどで急増している。参加者たちは、写真を交換し、電子メールや携帯電話のテキストメッセージを使って段取りを決める。  いざ集合する段になると、携帯電話とテキストメッセージを使い、集合場所のほか、これが最も重要なことだが、本人かどうかの確認が行なわれる。何が行なわれたかを記録するために、ビデオカメラやカメラ付き電話がますます利用されるようになっている。  「テクノロジーは不可欠な要素で、これが主として(ドッギング現象に)拍車をかけている」と話すのは、イギリスのハーパー・アダムス・ユニバーシティー・カレッジで講師を務めるリチャード・バーン氏。バーン氏は昨年、ドッギングに関する調査(PDFファイル)を実施し、ドッギングが、イギリスの郊外の公園において問題化しつつあり、そして問題が広範囲に及んでいることを報告した。  ドッギングはかなり一般的に行なわれており、バーン氏は報告書のなかで、イギリスにおける郊外の公園の60%がこの影響を受けていると推測している。  これに加えて昨年、一部の地域で性行為感染症の報告例が急増し、保健当局は、安全なセックスを呼びかける警告を複数のドッギング関連サイトに掲示することにしたと、BBCニュースは伝えている。『Yahoo!』(ヤフー)に開設された、あるドッギング・グループには2万2000人ものメンバーがいるという。  過去数年間で、ドッギングの人気は徐々に高まっていたが、一躍注目されたのは、今月に入ってからのことだ。イギリスで最も有名なアスリートの1人、サッカーの元イングランド代表、スタン・コリモア氏が、何回もドッギングに参加したことを認めたのだ。コリモア氏のこの告白は、当然のことながら、タブロイド各紙に大々的に取り上げられた。  ドッギングは、いよいよ有名になり、一方で酷評されつつある。この流行に乗って、3人組のグループ『Uロッカーズ』(URockers)は今月、ドッギングを祝福するシングルを、きわどいビデオとともにリリースした。  Uロッカーズのこの新曲『ドッギング』では、「皆の前でセックスするのは最高だ。クラクションを鳴らしてくれ。それがドッガー(dogger)にはたまらない」と歌われている。公式サイトによると、このグループは「インターネットから生まれた、セックスのアナーキスト集団」だという。  グループのメンバーは、まさにドッギングの集まりで出会ったという。3人組は全員が音楽業界の人間で、1人は国内では有名なDJ、また1人は、オーストラリア出身のボーカリスト、カイリー・ミノーグや、レッド・ツェッペリンのボーカリスト、ロバート・プラントと仕事をしたこともある著名なプロデューサーだ。  このシングルは、イギリスで今年中にリリース予定のアルバム『ア・モーメンタリー・ラプス・オブ・インカム』(A Momentary Lapse of Income)に収録される。グループは現在、米国におけるディストリビューターを探している。  「去年、イングランドの夏は記録的に暑く、(ドッギングに対する)興味が急激に高まった」。Gロッカーと名乗るグループのメンバーは、本名は明かさず、電子メールに限るという条件で取材に応じ、このように述べた。  Gロッカーによると、ドッギングには、あらゆる年齢や経歴の人たちが集まってくるが、大部分は中年の中産階級で、異性を求めている人々だという。また、偶然に車好きの走り屋が加わることも多いという。  「車いじりの好きな走り屋が加わったことでまた面白くなった。改造した車に乗った若者たちは、郊外の公共の場に集まるものだ……彼らは、自然とそこらをうろついているうちに、皆の前でセックスすることになる。車好きの若者と、フリーセックス愛好家、つまりドッガーとのあいだに強い結びつきが存在するわけだ」  このコミュニティーには、ハイテクマニアたちも引き寄せられている。「モバイル機器とウェブによって、状況がかなり変化した。知り合いの女性は、より安全になったと感じている」とGロッカーは述べる。「(テクノロジーのおかげで)どこに行けばいいのか、他の人たちが何を求めているのかがすぐにわかるようになった。ぴったりくる人たちと出会い、相手が素敵な人なのかどうかを見極めることが、以前よりもはるかに簡単になった」  バーン氏によると、ドッギングは、多くのオンラインの情報交換の場を介して組織されるという。イギリスでは主として、Yahoo!のなかに6つほどあるグループが情報交換の拠点となっている。また、ドッギングを扱ったポルノサイトもいくつかあるという。  状況を記録するために、ビデオやカメラ付き電話が使われているとバーン氏は述べる。また、大西洋をはさんで「バーチャル・ドッギング」を行なうためのビデオ用リンクを構築しようと試みた米国のユーザーもいたという。  「(ドッギングには)あらゆる年齢層が参加しているようだ。70歳の人がいることさえある。専門職、肉体労働者など、あらゆる背景の人たちがいる。しかし大多数は、30代後半~50代という年齢層だと思う」とバーン氏。  ただしドッギングは単なる楽しい遊びではないとバーン氏は警告する。性行為感染症の増加に加え、性的なものも含めた暴力、強盗、恐喝も報告されている(コリモア氏の場合、タブロイド紙に食い物にされるところだった)。また、昼間に郊外の公園を利用する人々通常、家族連れや子供たちと、夜間の利用者とのあいだでは、どうしても相容れないものがある。  それでもドッギングは、イギリス以外の国々にも飛び火しているようだとバーン氏は述べる。  「これまでは、まさにイギリス国内の現象だったが、ドイツ、フランス、アイルランドにも広がっている。米国とカナダでも増えていると思う」
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