憲法改正の手続きを定める国民投票法が14日昼の参院本会議で、自民、公明両党などの賛成で可決、成立した。
1947年の憲法施行から60年を経て、改憲に必要な法的環境が整う。安倍首相は在任中に改正を目指す考えを示しており、国会でも改正をめぐる議論が活発化しそうだ。
民主党などの野党は反対したが、同党の渡辺秀央氏は「政治家としての信念だ」として賛成した。この結果、投票総数は221で、賛成が122、反対が99だった。
成立した国民投票法は、与党が提出した案だ。国民投票の対象を憲法改正に限定し、賛成票が有効投票総数の過半数を占めた場合に改憲案を承認する内容となっている。公布から3年後に施行される。
投票権年齢は、原則18歳以上だが、公職選挙法などの関連法が改正されるまでは20歳以上とする。公務員や教育者が地位を不当に利用して投票運動をすることを禁じているが、罰則は設けていない。
参院憲法調査特別委員会では法案可決に際し、施行までに最低投票率の是非を検討することなど18項目の付帯決議を採択した。
同法の成立を受け、夏の参院選後に予定される臨時国会で、衆参各院に憲法審査会が設置され、改正をめぐる議論が始まる。ただ、同法は、施行までは憲法改正原案を提出したり、審査したりできないと定めている。
憲法は96条に改正条項を設け、国会の憲法改正発議には、衆参両院でそれぞれ、総議員の3分の2以上の賛成が必要であることなどを規定している。国民投票法は、この条項に肉付けし、改正の手順や要件を具体的に定めるものだ。
与党と民主党は昨年5月、それぞれの案を衆院に提出した。その後、共同修正を模索したが、国民投票の対象などで接点を見いだせず、与党は今年3月、単独で修正案を衆院に提出した。民主党は参院の審議で最低投票率制度を盛り込むよう求めたが、与党は「投票ボイコット運動を誘発する」として応じなかった。
首相は改憲を参院選の争点とする考えを示しており、自民党は今後、2005年にまとめた新憲法草案に沿った改正を主張する構えだ。公明党は改正自体には前向きだが、自民党の目指す9条改正には否定的だ。
一方、民主党では、小沢代表は改正に慎重な姿勢を示しているが、党内には積極論も少なくない。共産、社民両党は憲法改正に一貫して反対している。
与党は現在、衆院では3分の2以上の議席を確保しているが、参院では半数をわずかに上回る議席数だ。改正には、民主党の協力を得ることが不可欠になる。