支払ったはずの公的年金保険料が記録に反映されない「宙に浮いた年金」問題で拍車のかかる年金不安や不信が収まる気配がない。社会保険庁が11日開設した専用電話には問い合わせが集中。前日にはシステム障害で一時、記録が照会できなくなるトラブルもあり、社会保険事務所に足を運んだ人からは「しっかりして」「もっと迅速な対応を」などの声が出た。
午前8時半、24時間体制のフリーダイヤルが始まると、相談を一括して受ける東京都杉並区の社会保険業務センター中央年金相談室では一斉に電話が鳴り始めた。
あなたの年金記録、本当に役所にありますか
記者会見で頭を下げる村瀬清司・社会保険庁長官
社会保険庁の年期記録管理のずさんさが露呈している
どうも年金が怪しい。支払ったはずの年金が社会保険庁の記録では「未払い」扱いになっていたり、本人の名前が間違っていたり。呆れてしまうようなポカミスが発覚している。これでは怖くて、夢のリタイア生活に入れない。「あなたは年金の支給を受けられません」と、定年退職後になってからいきなり、宣告されないために、自己防衛の手を打っておこう。
厚生労働省・社会保険庁が認めたのは、約5000万件の該当者不明の年金記録があるという事実だ。生年月日が間違っていたり、記載されていないケースが含まれていて、個人の支払い記録が正確に確認できないという。記録内容が確認できないと、最悪の場合、受け取れる年金の額が本来の受給額よりも減るおそれが生じる。
なぜこうした記載ミスが起きたかは不明だ。本人が申告の際に誤ったミスと思われるが、社保庁や自治体の事務処理ミスの恐れもある。
怖いのは、誰の分が間違っていたのか、分からない点だ。社保庁は発覚したミスに関しては訂正するようだが、訂正通知が来るのかどうかはっきりしない。そもそも、発覚していない分は問題解決が先延ばしされてしまう。
安倍晋三首相は5月30日、約5000万件の該当者不明の年金記録に関する調査を、わずか1年間で終える方針を示した。しかし、この「宣言」はいささか信じがたい。予算や人手の問題から、そうたやすく調べが付くとは考えにくい。7月に迫った参院選を意識して、問題解決への熱意をアピールする狙いを込めた、間に合わせの「宣言」という印象が強い。
首相の「宣言」によれば、社会保険庁に納付記録の問い合わせに応じる電話窓口を設け、週末を含め24時間対応するという。しかし、電話で苦情を聞き取ってもらっても決着には至らない。最も大事なのは、正しく記録を作成してもらうことだ。しかし、一部の自治体は既に記録資料を廃棄しており、本当にデータを作り直すのは至難の業だ。
1人に1つ割り当てられている基礎年金番号を、社保庁が一元的に管理しているが、この番号管理がずさんだったことが最近になって分かっている。過去の加入実績に基礎番号が付いていない記録が大量にあり、まだ解決していない。
「会社がちゃんと手続きしているはず」の思いこみは禁物
基礎年金番号が導入された1997年より前は、転職するごとに別の番号が発行され、1人に複数の加入記録が作られていた。正しく年金を支払うには、こうした過去のすべての記録を寄せて管理する必要があるが、番号を付け損ねて、実際には年金に加入して、支払いもしていたのに、書類上は支払い空白期間が生じてしまっているケースがあり得る。
過去の年金制度の複雑さが災いして起きたトラブルと言える。加入者本人が勘違いして、手続きに抜かりがあったケースや、勤務先が厚生年金に入る仕組みを正しく整えていなかったケース、社保庁の管理上のエラーなどが主な原因として考えられれる。
年金の相談窓口に立ち寄る人が増えてきた
転職の経験、しかも比較的小規模の勤め先や、福利厚生制度がしっかりしていなかった法人・団体などに勤めていた人は要注意だ。自分の知らないところで年金記録が欠落しているおそれがある。
結婚して退職した人も年金制度上の扱いがきちんと変更されているかどうか、確認しておきたい。海外で長く暮らした人、国内で転勤した人も手続きが正しく済んでいるかどうか、調べておくにこしたことはない。
年金の加入状況をチェックするには、社会保険事務所や年金相談センターを訪ねるほか、社保庁サイトから記録照会コーナーにアクセスしたり、社会保険事務所に電話で照会して結果を郵送してもらうなどの方法がある。
社保庁、自治体任せでは痛い目を見るかも
転職の経験や、長期間の海外駐在などがなくても、単純に記録書類が紛失してしまっているケースもある。社保庁に年金の加入記録を照会した結果、本人が保険料を払ったと主張しているにもかかわらず、記録が存在しなかった人の数は3月末時点で2万人を超えた。
繰り返すが、問い合わせた人のうちの数だ。つまり、潜在的にははるかに件数は多いはずだ。この「記録確認不能」の中には、本人の勘違いだけでなく、社保庁や自治体が記録を紛失してしまったケースも含まれる。役所のずさんな資料管理のツケを65歳過ぎてから支払わされるのではたまったものではない。確認を求める申し込みが殺到して、対応が間に合わなくなる前に、電話1本で老後の安心を買っておきたい。
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